VoyagerGuitarsのアコースティックギター製作考

アコースティックギター製作、ヴォイシング・タップチューニングその他いろいろ~ヴォイジャーギターズ~

アコースティックギターボディの共鳴音~ヘルムホルツ共鳴~

ボディの共鳴音。
サウンドホールに向かっていろいろな音程で「ウーー」と言うと特定の高さで共鳴するのが分かります。その音がボディの共鳴音です。主にギターの一番低い音の部分を担うのでドレッドノートではG(98Hz)あたり、トリプルオーでA(110Hz)あたりになるように設計されています。シングル0とかL-00だともう少し高くてスモールボディギター特有のポコポコした箱鳴りがします。

この共鳴音がGやAなど特定の音程にピタリと合ってしまうとウルフとかデッドポイントと呼ばれる現象が起きるのでGとAbの中間とか少しずらしたあたりの周波数になるようにするのがセオリーです。

この共鳴音はヘルムホルツ共鳴と呼ばれています。ラムネの瓶の口に息を吹きかけるとボーという音がするのと同じ原理です。サウスウェールズ大学のホームページに計算方法が載っていますので計算してみました。

f:id:VoyagerGuitars:20160422152122p:plain

f (Hz) 共鳴周波数
c (m/s) 音速
r(m)サウンドホールの半径
V(㎥) ボディ内の容積
1.7は開口端補正

実際に数値を当てはめてみると

音速は340m/sにしました。
サウンドホールの半径は50mmなので0.05m。
ボディ容積はVJ-45のボディ面積をCADで測ったところ0.16㎡で、ネックでのボディ厚が98mm、ボディエンドで122mmとして足して2で割って110mm=0.11m。
0.16×0.11=0.0176なので四捨五入して0.018。

f:id:VoyagerGuitars:20160422152155p:plain

122HzだとB(5弦2フレット)の少し下くらいです。実際にはG(98Hz)くらいなのでちょっと差が大きいですね。

このヘルムホルツ共鳴の計算式は”容器の壁”が頑丈で動かないことが前提になっていますのでギターのように表板・裏板・側板が変形する場合はこの計算式では正確には求められないという事が分かりました。

ヘルムホルツ共鳴器の”壁”に柔軟性がある場合(Elastic Helmholtz resonator)に関して興味深い論文がありました。ヴァイオリンとヴィオラのfホールについてです。

The Air Cavity, f-holes and Helmholtz Resonance of a Violin or Viola
やはり”壁”に柔軟性がある場合は共鳴周波数が低くなるようです。

"サウンドホールの径が小さくなると共鳴周波数が低くなる”
"ボディ内の空気量が増えると共鳴周波数が低くなる”

という事に関しては通常のヘルムホルツ共鳴器と同じです。
他にもいろいろ面白いことが書いてありますので読んで損はないと思います。

結論としては、アコースティックギターのボディ共鳴音は

サウンドホールの直径
ボディ容積(ボディ内の空気の量)
トップ、バック、サイドの柔軟性

によって決まると考えていいと思います。(※サウンドホール直径と共鳴周波数の関係性については次回また詳しく書きますのでそちらも参照してください。)

計算によって周波数を導き出すことは難しそうなので新しいボディシェイプのギターを作る際はまず1本作ってみないと分からない、という事ですかね…。