VoyagerGuitarsのアコースティックギター製作考

アコースティックギター製作、ヴォイシング・タップチューニングその他いろいろ~ヴォイジャーギターズ~

アコースティックギター表板のヴォイシング、タップチューニングその3

表板の3つの振動モード」で出てきたロングダイポールとクロスダイポールは300~400Hz付近の1,2弦にとって「おいしい」周波数の振動モードです。個人的にこの振動モードをうまく機能させれば鳴らしにくい1,2弦を鳴らせるのではないか、と考えています。

ギターのボディはポンプのようにサウンドホールから空気を吸ったり吐いたりしています。モノポールの動作はでんじろう先生の空気砲のようなイメージです。空気を吸って吐いての繰り返しです。ギターの場合はこの動作にプラスしてスピーカーのように表板の表面が周囲の空気を直接振動させてもいます。
ロングダイポールやクロスダイポールではシーソーのように片方が膨らむと片方は凹みます。膨らむ部分と凹む部分が互いに打ち消しあってしまいサウンドホールから出る空気の量と表板が振動させる空気の量が減ってしまうと考えます。

 

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 イメージとしては下の動画のような感じ。

 

これを解消するために振動する強さに差をつければよいのではないか。片方がもう一方より強く振動するようにするのです。

多くのクラシックギター製作家は表板の低音弦側を薄く、高音弦側を厚くしています。鉄弦でもC.F.マーティンの考案したとされるXブレイシングはトーンバーが2本斜めに配置されており左右非対称になっています。上の画像でも分かる通り標準的なスキャロップドXブレイシングではすでにロングダイポールもクロスダイポールも片方がより多く振動しています。しかしブレイシングの断面形状で書いたように少しの表板の厚みやブレイシングの削り方次第で剛性が大きく変わりますのでこれが対称的な振動になってしまっても不思議ではありません。

次の画像はXブレイシングの下に4本のトーンバーを組み合わせて配置したいわゆるラティスブレイシングでのロングダイポールとクロスダイポールの振動の様子です。ブレイシング配置が左右対称のため、振動も対称になっているのが分かります。

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ブレイシングパターンが左右対称でも良いギターはたくさんありますので一概に「非対称パターンのほうが良い」とも言えません。またパターンが対称でも表板の厚みを部分的に変えたり、スキャロップの削り方で強度的に非対称にすることもできます。

どのようなブレイシングパターンでどれくらい対称・非対称にするかは製作家・メーカーによって様々です。

例えばボジョアはドレッドノートの高音弦側Xブレイスはスキャロップしていません。


Bourgeois Top Voicing Demonstration

※しかしソモギの本を読むと「波の干渉」を用いてダイポールでも必ずしも互いに打ち消しあう訳ではないというようなことが書いてあります…。どうなんでしょうね。