VoyagerGuitarsのアコースティックギター製作考

アコースティックギター製作、ヴォイシング・タップチューニングその他いろいろ~ヴォイジャーギターズ~

Fusion360でギター指板を作る。その4

Fusion360を使ったギター指板製作その4です。1~3はこちら。

CNCルーターで加工するのに必要なツールパスを作成します。製造からまずは設定。厚みは6.5mmに製材してCNC加工上がりで6.45mm、刃痕を消すのとフレット打ち前の平面出して0.1mm~0.2mmくらいは減るので仕上がり寸法で6.25~6.35mmくらいが目安です。

6mmボールエンドビットでアールを加工します。平行(走査線)で送り速度は2800mm、ピッチは0.3mm、軸方向の仕上げしろで0.1mm削り残すように設定します。CNCルーターの剛性にもよりますが削る量が少ないので送りはもう少し早くても大丈夫です。

続いてインレイと外周の加工。ドットが6mmなのでそれより細いφ5mmビットでまとめて加工します。送り速度は1500mm、木の硬さにもよりますがうちの小型CNCルーターではこれくらいの速度で1.5mm~2mmずつくらい掘るのが狂いが少ないです。インレイの掘り込みの微調整は”維持するストック”の”径方向の仕上げしろ”で正の数値を入れると小さめ(キツめ)に掘れます。負の数値、-0.1mmなどと入れると大きめ(ゆるめ)に掘れますので事前に試し掘りをして決めておきます。外周は刃痕を消すので0.1~0.2mmくらい仕上げしろを残したほうが良いでしょう。

フレット溝の加工にはこちらのビットを使っています。どうしても折れることがあるのでなるべく安い物で予備をストックしています。直径0.5mm、首下が3mmです。溝幅は刃ブレもあるので0.55mm程度で毎回仕上がってます。正直、溝幅の精度を出すのはテーブルソーに軍配が上がると思います(テーブルソーにも刃ブレはあるが)。精度の高い機械で0.4mmや0.55mmなどのビットが手ごろな価格で手に入れば元起きしやすい12~16フレットのみフレット溝を狭くしてネック強度を上げる、ということも理論上は可能でしょう。

ツールパスはトレースで作っています。溝の底面の片側だけを選択してパラメーターは画像の通り。パスの両方向にチェックを入れると刃が切り込みのたびに上に上がってこないので時間短縮できます。複数段深さは刃径の半分0.25mmずつです。

送り速度は400mm。かなりゆっくりです。切りくずが詰まると刃が折れるので加工時はエアーで飛ばしながら行っています。

フレット溝を切るのに必要な加工時間は25分程度です。テーブルソーで切るより時間がかかります。

これで全工程が完了です。加工時間は合計で約1時間。今回のようなスタンダードな指板では時間的メリットはあまりありませんが、ファンフレットや複雑なインレイの入った指板を複数枚並べて加工すればメリットが出てくると思います。

最後にこの指板の3Dデータです。このデータをもとにギターを製作した場合の不具合等については責任は持ちません。有償無償を問わず他サイトへの転載や販売・再配布は禁止とします。

TDFIngerBoard.step 

Fusion360でギター指板を作る。その3

3D CADをFusion360を使ったギター指板製作その3です。前回の記事はこちらから。

今回はインレイ、ドットポジションマークを入れます。指板表面はすでにアールがついているのでスケッチが作成できません。なので構築→オフセット平面を使って指板の厚み分だけオフセットした面を作りそこにスケッチを作成します。

あとは簡単、そのスケッチにインレイを書き込みます。今回は6mmのドットですが複雑なインレイでも方法は同じです。実物のインレイには誤差もありますし、微調整して掘る必要がありますがその作業は後のツールパスを作成する際に指定すればよいのでここではインレイとピッタリのサイズです。

インレイの厚みが2mmなので1.8mm切り取ります。

12フレットはアールの分だけ浅くなってしまうのでプレス/プルで微調整します。オフセットタイプを新規オフセットにしないとほかのインレイの深さも変わってしまうので注意。0.4mmくらい深くすれば大丈夫です。

これでモデリングは完了。サイドドットもCNCで加工するなら追加しても良いですね。

次回、ツールパス作成に続く。


Fusion360でギター指板を作る。その2

前回の記事はこちら。今回はアールとフレット溝です。

コンパウンドレディアス(円錐指板)にするためにこちらのサイトにスケール、弦間隔等を入力して計算します。こちらのサイト、設計図等もたくさん載っていています。

ナットでのアールを14インチ(355.6mm)にして計算すると、指板エンドで454.93mm=約18インチとなりました。

指板のナット側の面にスケッチを作成します。指板の厚みは6.35mm、アールを355.6mmで描いて指板サイド・トップと結び、削り取りたい部分が選択できるようにします。指板エンドにも同じようにスケッチを描きます、アールは先ほど計算した454.93mmです。

次にソリッド→作成→ロフトにて先ほどスケッチしたナット側、指板エンド側の削り取りたい面を選択します。うまくできていればこのように指板の平らな上面が円錐状に切り取られます。

フレット溝に移ります。まずは修正→ボディを分割をクリック。分割するボディは指板本体(ボディ1)。分割ツールはフレット溝(ボディ2~21)の部分を選択しOKで分割します。

これでボディは本体(ボディ1)、最初に新規ボディで立ち上げたフレット溝(ボディ2~21)、いま本体から分割されて新しくできたフレット溝(ボディ22~41)となります。このうち不要なボディ2~21を選択し”除去”で消します。この作業により今まで重なっていた指板本体(ボディ1)とフレット溝の部分が別々のボディになった状態になります。

次にすべてのフレットの溝の表面を選択してプレス/プルでフレット溝深さを指定します。ここでは-2.5mmとしました。これで指板アールにそった底面の溝が出来上がります。

最後に分割されているボディを結合でひとつにまとめます。ターゲットボディがボディ1、ツールボディに残りのボディを選択します。

構造的な部分はこれで完成です。次回につづく。





 

Fusion360でギター指板を作る。その1

3DCADソフト、Fusion360を使ったギター指板の作り方です。寸法は以前のブログ記事で公開したDタイプの物を使用します。

アールはコンパウンドレディアス(円錐指板)、フレット溝の底面は指板のアールに沿った深さ、端からタングが出ないように両サイドを1.5mmずつ残し溝を切る疑似バインディング仕様にします。これはCNCルーターでしか製作できない仕様です。フレット溝が必要以上に深くならないので指板の強度が上がりネックの安定性、剛性アップにつながります。またバインディングも貼らないので木目を合わせる必要がなく工程も省略できます。

まずはスケッチでナット幅、エンド幅を入れて指板の土台を描き、押し出しで厚み6.5mmで立ち上げてボディを作ります。指板の最終厚みは6.35mmですがアールを後でとる関係で少し厚めにしています。

立ち上げたボディの表面にスケッチを作成、フレット溝の中心線を引いていきます。フレットの間隔はStewMacのフレット計算サイトなどを利用します。まずは0フレット(ナット)の上に線を引いてそれをオフセットで各フレットの位置にコピーしていきます。

次に指板の両サイド(指板幅の線)をオフセットで1.75mm内側に線を引きます。先ほどのフレット溝中心線は長さが足りないところは延長し、1~3フレットの長すぎるところは破断を使い1.75mmのラインに合わせます。

スロットを使いフレット中心線の両端を選択して、スロット幅を0.5mmと入力します。これでフレット溝ができます。先ほど指板幅の1.75mm内側に線を引いていますのでフレット溝スロットの半径0.25mm分が外にはみ出て、指板の端からフレット溝までの距離(疑似バインディングの厚さ)は1.5mmとなります。これを例えば2mmにしたければ1.75mmを2.25mmにすればよいですね。

この1.75mmの線は必要ないので削除しておきます。

出来上がったフレット溝すべてを選択し”新規ボディ”で指板の厚み(-6.5mm)だけ押し出します。

このように指板本体(ボディ1)とフレット溝(ボディ2~21)が作成されているのが確認できます。現状は両者が重なった状態です。

今回はここまで。次回に続きます。

 

CNCルーター Shapeoko 3導入~切削編~

ShapeokoではCarbide Motionというソフトが無料で使用できるのでそれを使ってコンピューターからCNCルーターGコードを送ります。

まず材料をセットします。今回は簡単に両面テープで固定しました。

次にJogを使ってビットを任意の位置へ動かしてX軸、Y軸、Z軸それぞれの原点を設定します。前の記事で原点はロッドカバーのナット側中心に設定したのでそこにエンドミルを合わせます。 

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Z高さは材料の上面にしたのでそちらはプローブで合わせました。

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RunのLoad New FileからGコードファイルを読み込みスタートします。指定したエンドミルを取り付けることを要求されるので準備が出来たらResumeをクリック。

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ビットセッターを使っている場合は工具長を自動で計測したのちにルーターのスイッチをオンにするよう指示されるので、スイッチをオンにしてResumeをクリックすると切削が始まります。

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途中でエンドミルを交換する際も同じ流れです。今回は0.8mm、3mm、3mmボールの3種類のビットを使用して切削しました。


5分くらいで切削できました。

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手作業では均一に加工するのが大変な面取りもきれいに仕上がっています。

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CNCルーター Shapeoko 3導入~Fusion360による3Dモデル作成~

Shapeokoに限らずCNCルーター使用法の大まかな流れは

①3D CADソフトでのモデル作成

②CAMソフトでツールパス(Gコード)の作成

GコードセンダーでCNCマシンへGコードを送り切削する

となります。

3D CADとCAMはFusion360というソフトに入っておりそちらを使用しています。非常に高性能なソフトですが、非商用利用やスタートアップ企業向けのサブスクリプションに該当する場合は申請することで無償で使用することが出来ます。

2D CADやillustratorからもインポートできますし、それらのソフトが扱える方ならYoutubeなどで使い方を覚えれば問題ないと思います。



実際に作ったトラスロッドカバーを例に簡単に説明すると

まず「デザイン」のスケッチで平面図を作製、これはもともと使っていた2D CADで書いたものをdxfファイルにして読み込みました。

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このスケッチを押し出しで立体にします。厚みは2.5mmにしました。

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修正の面取りでエッジを斜めにします。

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これで3Dモデルの完成です。複雑な形状のものでなければ比較的短時間で作れます。

次に「製造」からツールパスを作るのですが事前に管理-工具ライブラリから自分の持っているエンドミルを登録する必要があります。Shapeokoの場合、クーラントは無効に設定する必要があります。


Fusion360 CAM解説 ツールライブラリー登録(ちょっとだけポストも)


工具が登録出来たらセットアップで原点とストックの設定をします。

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Fusion360にはいろいろな切削方法が用意されているのでその中から加工に適したものを選んでツールパスを作成します。

このロッドカバーでは

2D輪郭、0.8mmエンドミルでネジ穴をあける
2D輪郭、3mmエンドミルで外周を切り出す
3D急斜面と緩斜面、3mmボールエンドミルで面取り加工

の3段階で加工することにしました。

シミュレーションで問題がないことを確認できます。

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ポスト処理のポストコンフィグでCarbide 3D (Grbl) / carbide3dを選択して任意のフォルダにGコードを出力します。これでFusion360での作業は完了です。

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小型CNCルーターShapeoko 3 XL 導入しました~組み立て、動作確認編~

アメリカから届いたShapeoko 3 XL。巨大な段ボールを西濃運輸さんが配達してくれました。開梱するとこの様にパーツごとに分けられています。六角レンチなどの必要な工具もすべて入っています。

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オンラインマニュアルが下のリンクから確認できるので見ながら組み立てていきます。すべて英語ですが写真と自動翻訳で大体わかると思います。

動画も事前に見ておくと大体の流れが分かります。

Shapeokoは細かい部分が常に改良されていて、最新のアップデートやオプションのZ plusに関する部分は印刷されたマニュアルが付属しますのでそれを参考にします。

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とくに難しい部分はなく半日あれば組み立てられると思います。X軸、Y軸のレールを取り付けるネジ穴が少しズレていてそのままでは取り付けにくかったので各プレート側のネジ穴をリーマーや棒ヤスリで拡張しておくと作業がしやすいです。

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Y軸レール取付ネジ、前後左右の合計16本。

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X軸レール取付ネジ、左右8本。各部のねじは少し緩めに締めておき最後に微調整します。フレームとレールが組みあがったら駆動用のベルトを張って、エキセントリックナットの締め具合の確認も忘れずに行います。

最後に配線作業です。ケーブルはドラッグチェーンの中にあらかじめ収められていて、コネクタは差し込むだけなのでハンダ付けは必要ありません。

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この基板ですが新しい物でまだ設計が煮詰まっていないらしく、ケースのふたを閉めると配線が干渉します。こちらの掲示板にも同じ書き込みがあります。ケーブルが切れるほどではなかったのでとりあえずそのまま使っています。

全て出来上がったら動作チェックをします。安全のためトリマーの電源は抜いておきます。Shapeokoを動かすためのソフト Carbide MotionをダウンロードしてPCにインストールしておきます。機械とPCをUSBで接続します。

ソフトを立ち上げてCONNECT TO CUTTERをクリック

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右上のSETTINGSをクリックしてプルダウンメニューから自分のShapeokoに合わせて内容を選択しSend Configuration Dataをクリックすると機械にデータが送られます。30秒くらいかかります。もしBitSetterを購入していても最初は操作が面倒になるので、チェックを入れない状態にしておいたほうが良いと思います。

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INITIALIZE MACHINEをクリックするとまずZ軸が上に、Xが右へ、Yが一番奥まで動きリミットを検知します。f:id:VoyagerGuitars:20200402182013j:plain

これで初期設定が完了します。いきなり刃物を使うのは危険なのでまずはトリマーにマジックペンを括り付けて字を書いて動作確認を行う、Hello Worldテストをします。データファイルと詳しい方法はこちらのリンクから入手できます。A4用紙をベースボードに貼り付けてJogを使ってペンの先端が用紙の左下、紙にちょうど届く高さに移動させたらSet ZeroをクリックしてXYZ軸の原点を指定、Gコードを読み込んでスタートします。

問題なく動作したらそのまま使用することもできますが、下の動画を参考にダイヤルゲージを使って微調整をすることでより正確に使用することが出来ます。

次回、使用方法編へ続きます。