VoyagerGuitarsのアコースティックギター製作考

アコースティックギター製作、ヴォイシング・タップチューニングその他いろいろ~ヴォイジャーギターズ~

CNCルーター Shapeoko 3導入~切削編~

ShapeokoではCarbide Motionというソフトが無料で使用できるのでそれを使ってコンピューターからCNCルーターGコードを送ります。

まず材料をセットします。今回は簡単に両面テープで固定しました。

次にJogを使ってビットを任意の位置へ動かしてX軸、Y軸、Z軸それぞれの原点を設定します。前の記事で原点はロッドカバーのナット側中心に設定したのでそこにエンドミルを合わせます。 

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Z高さは材料の上面にしたのでそちらはプローブで合わせました。

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RunのLoad New FileからGコードファイルを読み込みスタートします。指定したエンドミルを取り付けることを要求されるので準備が出来たらResumeをクリック。

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ビットセッターを使っている場合は工具長を自動で計測したのちにルーターのスイッチをオンにするよう指示されるので、スイッチをオンにしてResumeをクリックすると切削が始まります。

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途中でエンドミルを交換する際も同じ流れです。今回は0.8mm、3mm、3mmボールの3種類のビットを使用して切削しました。


5分くらいで切削できました。

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手作業では均一に加工するのが大変な面取りもきれいに仕上がっています。

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CNCルーター Shapeoko 3導入~Fusion360による3Dモデル作成~

Shapeokoに限らずCNCルーター使用法の大まかな流れは

①3D CADソフトでのモデル作成

②CAMソフトでツールパス(Gコード)の作成

GコードセンダーでCNCマシンへGコードを送り切削する

となります。

3D CADとCAMはFusion360というソフトに入っておりそちらを使用しています。非常に高性能なソフトですが、非商用利用やスタートアップ企業向けのサブスクリプションに該当する場合は申請することで無償で使用することが出来ます。

2D CADやillustratorからもインポートできますし、それらのソフトが扱える方ならYoutubeなどで使い方を覚えれば問題ないと思います。



実際に作ったトラスロッドカバーを例に簡単に説明すると

まず「デザイン」のスケッチで平面図を作製、これはもともと使っていた2D CADで書いたものをdxfファイルにして読み込みました。

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このスケッチを押し出しで立体にします。厚みは2.5mmにしました。

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修正の面取りでエッジを斜めにします。

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これで3Dモデルの完成です。複雑な形状のものでなければ比較的短時間で作れます。

次に「製造」からツールパスを作るのですが事前に管理-工具ライブラリから自分の持っているエンドミルを登録する必要があります。Shapeokoの場合、クーラントは無効に設定する必要があります。


Fusion360 CAM解説 ツールライブラリー登録(ちょっとだけポストも)


工具が登録出来たらセットアップで原点とストックの設定をします。

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Fusion360にはいろいろな切削方法が用意されているのでその中から加工に適したものを選んでツールパスを作成します。

このロッドカバーでは

2D輪郭、0.8mmエンドミルでネジ穴をあける
2D輪郭、3mmエンドミルで外周を切り出す
3D急斜面と緩斜面、3mmボールエンドミルで面取り加工

の3段階で加工することにしました。

シミュレーションで問題がないことを確認できます。

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ポスト処理のポストコンフィグでCarbide 3D (Grbl) / carbide3dを選択して任意のフォルダにGコードを出力します。これでFusion360での作業は完了です。

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小型CNCルーターShapeoko 3 XL 導入しました~組み立て、動作確認編~

アメリカから届いたShapeoko 3 XL。巨大な段ボールを西濃運輸さんが配達してくれました。開梱するとこの様にパーツごとに分けられています。六角レンチなどの必要な工具もすべて入っています。

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オンラインマニュアルが下のリンクから確認できるので見ながら組み立てていきます。すべて英語ですが写真と自動翻訳で大体わかると思います。

動画も事前に見ておくと大体の流れが分かります。

Shapeokoは細かい部分が常に改良されていて、最新のアップデートやオプションのZ plusに関する部分は印刷されたマニュアルが付属しますのでそれを参考にします。

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とくに難しい部分はなく半日あれば組み立てられると思います。X軸、Y軸のレールを取り付けるネジ穴が少しズレていてそのままでは取り付けにくかったので各プレート側のネジ穴をリーマーや棒ヤスリで拡張しておくと作業がしやすいです。

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Y軸レール取付ネジ、前後左右の合計16本。

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X軸レール取付ネジ、左右8本。各部のねじは少し緩めに締めておき最後に微調整します。フレームとレールが組みあがったら駆動用のベルトを張って、エキセントリックナットの締め具合の確認も忘れずに行います。

最後に配線作業です。ケーブルはドラッグチェーンの中にあらかじめ収められていて、コネクタは差し込むだけなのでハンダ付けは必要ありません。

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この基板ですが新しい物でまだ設計が煮詰まっていないらしく、ケースのふたを閉めると配線が干渉します。こちらの掲示板にも同じ書き込みがあります。ケーブルが切れるほどではなかったのでとりあえずそのまま使っています。

全て出来上がったら動作チェックをします。安全のためトリマーの電源は抜いておきます。Shapeokoを動かすためのソフト Carbide MotionをダウンロードしてPCにインストールしておきます。機械とPCをUSBで接続します。

ソフトを立ち上げてCONNECT TO CUTTERをクリック

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右上のSETTINGSをクリックしてプルダウンメニューから自分のShapeokoに合わせて内容を選択しSend Configuration Dataをクリックすると機械にデータが送られます。30秒くらいかかります。もしBitSetterを購入していても最初は操作が面倒になるので、チェックを入れない状態にしておいたほうが良いと思います。

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INITIALIZE MACHINEをクリックするとまずZ軸が上に、Xが右へ、Yが一番奥まで動きリミットを検知します。f:id:VoyagerGuitars:20200402182013j:plain

これで初期設定が完了します。いきなり刃物を使うのは危険なのでまずはトリマーにマジックペンを括り付けて字を書いて動作確認を行う、Hello Worldテストをします。データファイルと詳しい方法はこちらのリンクから入手できます。A4用紙をベースボードに貼り付けてJogを使ってペンの先端が用紙の左下、紙にちょうど届く高さに移動させたらSet ZeroをクリックしてXYZ軸の原点を指定、Gコードを読み込んでスタートします。

問題なく動作したらそのまま使用することもできますが、下の動画を参考にダイヤルゲージを使って微調整をすることでより正確に使用することが出来ます。

次回、使用方法編へ続きます。

小型CNCルーターShapeoko 3 XL 導入しました~購入編~

先日、小型のCNCルーターを導入しました。少し前まではCNCルーターと言えば大型で1台、数百万円~億の世界で個人工房には無縁の存在でした。また動かすのに必要な3D CADソフトやCAMソフトも高額でした。しかしここ数年のデジタルファブリケーションの進化は目覚ましく個人でも手の届く機種が出てきたので導入に踏み切りました。予算内に収まる機種の中でC-beam Xlargeと最後まで迷ったのですが加工エリアが少し足りなかったのでCarbide3DのShapeoko XLを購入しました。

https://carbide3d.com/shapeoko/

3サイズあり縦横(X軸とY軸)の加工エリアがそれぞれ

Shapeoko 3 406mm×406mm
Shapeoko XL 406mm×838mm
Shapeoko XXL 812mm×838mm

XXLは大きすぎて工房内のスペースに収まらないためXLにしましたがそれでもフェンダー系のボディ・ネックを加工できる大きさ。高さ(Z軸)は3インチ(75mm)となっていますが、これは土台にする捨て板(Waste board もしくはSpoiler board)の厚みや材料の固定方法、使用するトリマーによっても変わります。

 X軸とY軸はベルト駆動で、Z軸は通常のベルト駆動のほかに剛性強化版のZ-plus(ボールスクリュー駆動)が購入時に選択できたのでそちらにしました。別売りでさらに剛性の高いHDZも用意されています。

トリマーも本体と同時にCarbide3Dオリジナルの物を購入。国内100V電源でも問題なく使用できています。付属のコレットは軸径1/4インチと1/8インチのビット用なのでマキタの6mmコレットをモノタロウから別途購入しました。

他にも、原点の位置合わせができるTouch Probe、ビット交換時に刃物長を自動で検出するBitSetterなどを同時購入して2,146ドル+送料が260.6ドルでした。後日fedexから約2万円の関税の請求書が届き、すべて合わせて約30万円。それでも日本国内で販売されているKitMill MOC900Roland MDX-50と比べると手が届きやすい価格です。

注文から到着までは10日間くらいで、意外と早く届きましたが肝心のトリマーが入っておらずメール連絡して後から送ってもらいました。

次回、組み立て編に続きます。

D-18タイプ・アコースティックギター製作その5~表板ブレーシング~

ブリッジプレートはローステッドメープル材を使用しています。サーモウッドとかトーリファイドと呼ばれる加熱処理材です。厚みは1.9~2.1mmこれも低音弦側を薄く、高音弦側を厚くしています。ブレーシング材はシトカです。グレーベン曰くマーティンはブレーシングにアディロンダックは一度も使っていなかったとのこと。ドーミングは40feet=約12mです。

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Xブレーシングの交点には布を張るのではなくスプルースでフタをするように接着します。サウンドホール周りの補強もクラシックギターのようなリング状のスプルースです。マーチンクラックやロゼッタ周辺の割れ・変形のリペアの経験からこのあたりの処理は強度と耐久性を重視しています。

f:id:VoyagerGuitars:20190806225327j:plainすべてのブレーシングを接着してある程度整形したら横板と接着します。この時点ではスキャロップ加工は行いません。

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裏板が貼られていない状態でモールドに入れてスキャロップをします。

ここは何mm削るということではなくて任意の周波数になるように少しずつ削っていきます。寸法で決めてしまうと木材の強度の差によって強すぎたり弱すぎたりしてしまうのでモノポール、ロングダイポール、クロスダイポールの周波数を目安にすることで強度と響きを最適化します。

具体的な方法としては振動スピーカーと紅茶の葉っぱを使ってクラドニパターンと呼ばれる方法で各振動モードの周波数を探ります。そして葉っぱの留まる場所、つまり振動していない節になっている部分に線を引いておきます。スキャロップの際にその線の部分を削らずに残すようにすることでブレーシングのピークの位置がおのずと現れます。

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周波数のみでなくタップトーンの変化も聞き取って、トンというサスティンのない高い音からもっとオープンな少しサスティンのある音になるまでスキャロップします。気分的なものかもしれませんが叩いたときに指先に少し弾力を感じるようになります。初めてこの作業を行うのであれば同じ形のギターを2本並行して作って比較しながら行うと良いでしょう。

最終的に
モノポール:147Hz
ロングダイポール:349Hz
クロスダイポール:395Hz

としました。ミディアムゲージを張ることも想定して少し高めになっています。硬すぎたら完成後にサウンドホールから手を入れてもう少しスキャロップすることもできます。

一つの個所を削っても各振動モードに影響しますのであちらを立てればこちらが立たずといった状況が生まれます。ロングダイポールの周波数だけを低くしたくてもそうはならないわけです。それを変えるにはもっと根本的なボディシェイプやブレーシングパターンを変えなくてはいけません。音の方向性はそういった部分で決められておりヴォイシング作業はあくまでも最適化なのです。

ヴォイシングが終了したら裏板を接着します。裏板も外周を固定する道具を作ることで表板同様にクラドニによるヴォイシング作業を行うことができますが現状はそこまでの作業は必要ないと判断してフリープレートでのタッピング確認にとどめています。

最終的なブレーシング形状です。極端な剛性の差を避けるために現行マーティンのエグるようなカーブのスキャロップではなく、なだらかなカーブになっています(ブレーシングの高さと強度については過去記事参照)

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D-18タイプ・アコースティックギター製作その4~ネックブロック・エンドブロック~

ネックブロックはマホガニー、L字にすることでネック起きを抑止する効果があります。エンドブロックはバーチ合板(12mm厚)です。バーチ合板は強度があり木目が互い違いに積層されているので割れにくく、万が一の際のリスクを減らすことができます。

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別のギターの写真ですがネックブロックと横方向の一番強いブレース(upper transverse brace)が一体となってネックが起き上がろうとする力を支えているのが分かります。また指板よりも幅が広いブロックにすることで指板が乾燥により収縮しても表板が割れるのを防ぐ効果もあります。

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エンドブロックはエンドピンやジャックの取り付け部となる中央のみを残し、表板・裏板と接着する部分はライニングと同じ厚みになるように整形します。これによってエンドブロックの余計な重量を落とし、表板・裏板の振動面積を確保します。

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D-18タイプ・アコースティックギター製作その3~横板~

横板の厚みは2.0mmを基準に曲げやすい材や形であれば2.2mmくらいまで、杢の入った材やくびれのきつい形であれば1.8mmくらいまでで調整します。プレーンのマホガニードレッドノートなので2.2mmです。

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曲げはシリコンラバーヒーターとサイドベンダーで行います。水は少ないほうが反りや歪みが少ないと思います。温度はローズなら280℉(137℃)、マホやメープルは300~320℉(148℃~160℃)くらいで曲げています。曲げてから250℉に下げて15分ほど過熱したら電源を切って冷まします。

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熱と水分が加わることで多少の歪みはどうしても出てしまうので箱になってから研磨してなるべく平面に修正します。完璧な平面を求めて削りすぎると場所によって極端に厚みが変わることになるのでバインディングの貼り付けに影響のない範囲でとどめます。

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そのような面からも薄板を2枚張り合わせたダブルレイヤーサイドは良いアイデアと思います。例えば1.5mm厚なら曲げやすく、型にはめて接着することで平面も出て3.0mm厚の非常にしっかりした横板が出来ます。ドラムのリムのようにしっかりした横板で表板と裏板がより振動するというのがダブルレイヤーの理論です。しかし横板(や裏板)のやわらかさが振動を吸収・拡散することでコンプレッション感などを生み出しているとも考えられるので求める音によっては不向きかもしれません。